請負契約と委任契約
システム開発の契約形態は大きく二つに分けることができます。
請負契約
請負契約とはシステム開発の成果に対して発注者が受注者に報酬を支払う契約を指します。
つまり、受注者はシステムを開発した成果、すなわち「モノ」を納めることで報酬を得るのです。
発注側の企業にとっては、システムの完成と納期が保証されるので非常に安全な契約といえます。
いっぽう受注側のシステム開発会社にとっては、見積もった予算内にシステムを完成させることができなければ、赤字になる可能性もあります。
また完成させた後の成果物の結果責任をも負うことになるので、大変リスクの高い契約となります。
しかし、開発コストを抑えながら品質の高い成果物を完成させることができれば大きな利益を得ることができるというメリットもあります。
委任契約
委任契約とは、発注者から受注者へ「システム開発作業を行うこと」を委託し、受注者がそれを受諾することによって成立する契約を指します。
つまり、受注者はシステム開発を行う作業者、すなわち「ヒト」を提供することで報酬を得るのです。
委託契約では契約で合意したスキルレベルのシステムエンジニアを提供してシステム開発行為を行うことを約束します。
しかし、システム開発の成果物を完成させることについては約束しません。
そのため発注側にとっては、開発の遅れや作業者の増員が必要になると直接コスト増に響いてしまいます。また、最悪の場合はシステムが完成しないリスクまで負わなければなりません
逆に受注側は、システム開発の失敗に対してリスクを負わないという点で安全な契約ではあります。
しかしその分、大きな利益にはつながりにくい契約といえます。
システムエンジニアの役割
請負契約でも委任契約でも実際に作業を行うのはシステムエンジニアです。
そのため、仕事内容が大きく変わるわけではありません。
また会社員であれば、どのような契約でも会社から毎月、給料が支払われるわけですから、会社間の契約形態を意識することはあまりないでしょう。しかし、「どうすれば自分の会社に利益をもたらすのか」という視点でみると、請負契約と委任契約は意識すべきことが全く異なってきます。
請負契約での役割
まず、請負契約の場合は、「いかにコストをかけずにシステムを構築するか」ということが至上命題になります。
たとえば、1億円で受注したシステムを5000万円の開発コストで作ることができれば、利益は5000万円となります。
しかし、開発コストに1億円かかってしまえば利益はゼロです。
開発コストを下げるためには、できるだけ少ない要員で開発を行う必要があります。
また、開発を効率的に行うことで、作業時間を短くし、残業代などのコストを減らすこともできます。
逆に、これらのコストをかければかけるほど、利益は減っていくことになります。
とはいえ、あまりにコストを削り過ぎると、本来必要な作業までも削らざるをえなくなります。
そうなると品質の低いシステムが出来あがることになり、完成した後もバグ対応や修正を繰り返さなければならず、結果として利益を減らすことになってしまいます。
そうならないように開発コストと品質のバランスをうまく調整しながら開発を進める必要があるのです。
このように「システムの品質を保持しながらコストを下げて、利益を最大化すること」が請負契約におけるシステムエンジニアの役割になります。
委任契約での役割
委任契約の場合は、「いかに人を増やして利益を上げるか」ということが目標となります。
基本的には「ヒト」を売って儲ける契約ですから、そこで働くエンジニアの数が増えれば増えるほど、また、エンジニアが働いて残業代を稼げば稼ぐほど、会社としての利益が上がっていくのです。
よって、委任契約でのシステムエンジニアの役割は
「まずは、契約で合意した労働時間のなかで、最高の成果を出してお客さまからの信頼を得ること」
であり、さらには
「お客さまから任される仕事の範囲をどんどん広げて、自社から送り込むシステムエンジニアの数を増やして利益を上げること」
ということになります。
私の個人的な見解
請負契約と委任契約、どちらの契約形態もメリット・デメリットがあります。
また、基本的には会社と会社の契約なので、システムエンジニアが契約形態を選択できるわけではありません。
しかし、契約形態に応じて利益を出す方法をシステムエンジニアが意識しておくことも大切ということが理解できたと思います。
ちなみに、私個人的には「請負契約」のほうが、システムエンジニアの契約としてあるべき姿と信じています。
なぜなら「ヒト」を売る「委任契約」というのは、広い意味でアルバイトと変わらないからです。
ある程度の技術力があれば誰でもいいわけです。
そうではなく、付加価値の高い「モノ」を作って売る「請負契約」のほうが、システムエンジニアの創意工夫を促すことができますし、利益を出すためにスピードや効率な仕事を追求することで技術者としての成長も見込めると思うのです。
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