フリーランス単価・収入について40代がよくする誤解
フリーランスSE歴19年の筆者が、40代のエンジニアから何度も受けた「単価と収入」に関する質問。正直に言うと、かなり多くの人が間違った認識を持っています。Web上の情報が理想化されすぎているため、現実とのギャップで困っている方を見かけます。
本記事では、筆者の失敗談や実際の案件事例を交えながら、40代がよく勘違いしてしまう単価・収入の真実をお伝えします。
誤解1:月80万円案件は「単価が高い」わけではない
よくある勘違い
「月80万円の案件」という話を聞くと、「単価が高い案件だ」と感じてしまいませんか。実際には違います。
2026年現在の相場として、フリーランスSEの月額単価は以下の通りです:
| スキル・経験年数 | 相場単価(月額) |
| 初級(3年以下) | 40万〜60万円 |
| 中級(4〜10年) | 60万〜90万円 |
| 上級(11年以上) | 80万〜150万円 |
| スペシャリスト | 150万円以上 |
つまり、月80万円は「相場の中流」にすぎません。40代で19年のキャリアがあれば、むしろ相場より低い可能性もあります。
実際に何が起きているか
月80万円案件が「高くない理由」は、案件の質にあります。筆者の経験では:
- 下請け案件:元受企業が200万円で受注し、100万円で下請けへ。そこからさらに下ろされて80万円になるパターン
- 客先常駐・長期案件:時給換算すると実は時給3,000円程度(年間稼働250日で月20日稼働なら月80万 ÷ 160時間 = 時給5,000円に見えるが、営業活動・事務作業・待機時間含めると実質時給3,000円)
- 保守運用案件:楽な仕事だが、スキルアップにならず、3年後に単価が上がらないリスク
誤解2:年1,000万円超えは「努力次第」ではなく「運と人脈」
正直な話
「フリーランスなら年収1,000万円を目指そう」というキャッチフレーズをよく見かけます。実際には、年1,000万円超えのフリーランスSEは全体の5%以下です。
筆者が19年で学んだのは、年1,000万円超えには以下の条件が必要という点です:
- 高度なスキル(AWS認定資格・Kubernetes・セキュリティなど特定分野の深い知識)
- 営業スキル・人脈(元々いた企業からの紹介が70%以上)
- 受注交渉力(単価交渉で月100万円以上を引き出せる力)
- 案件選別眼(儲からない案件を断る勇気)
- 運(景気変動・技術トレンドの波乗り)
ここで重要なのは、努力だけでは足りないという点です。筆者自身、2008年のリーマンショック後は月30万円まで落ち込み、その後5年かけて回復させました。技術力があっても、相場変動の影響は避けられません。
誤解3:「単価が高い案件」ほど納期が短い
月100万円以上の案件の実態
月150万円以上の案件を取ろうとすると、実は案件難度が指数関数的に上がります。
筆者の経験では、以下のようなパターンです:
- 月80万円の案件:納期3ヶ月、やや難度あり
- 月120万円の案件:納期1.5ヶ月、かなり難度高い、トラブル発生時も責任重大
- 月150万円以上の案件:納期2週間以下、プロジェクト崩壊リスク、顧客が激怒している状態での救済案件が多い
つまり、単価が高い案件ほど「短納期+高難度+高プレッシャー」という負のスパイラルに陥りやすいのです。40代で体力・気力が落ちていると、このような案件は逆に稼げない可能性があります。
誤解4:「会社員より稼げる」は税金を考慮していない
手取りの実態
月80万円のフリーランス案件と、年収1,000万円の会社員を比較してみましょう。
| 項目 | 月80万円フリーランス | 年収1,000万円会社員 |
| 売上(年額) | 960万円 | 1,000万円 |
| 経費(売上20%見積) | -192万円 | -0円 |
| 所得税・住民税 | -180万円 | -180万円 |
| 社会保険(全額自己負担) | -90万円 | -50万円(会社負担分含) |
| 手取り(推定) | 498万円 | 770万円 |
驚くかもしれませんが、月80万円フリーランスの手取りは年収500万円未満になることがほとんどです。Web上で「年1,000万円超え」と謳っている人のほぼ全員は「売上」を基準にしており、実際の手取りは示していません。
誤解5:「営業が得意でなくても仕事は来る」は甘い
40代こそ営業が必須
20代・30代のうちは、企業の紹介や縁故で案件が来ることもあります。しかし40代では違います。
正直に言うと、筆者が営業スキルを身につけたのは35歳のときでした。それまでは「技術力があれば仕事は来る」と信じていました。その結果、35歳で案件がゼロになり、3ヶ月間無職状態に陥りました。
40代のフリーランスSEが仕事を継続するために必要なのは:
- 継続案件の確保(新規営業ではなく既存顧客との関係維持)
- 過去クライアントとのネットワーク(SNS・LinkedIn発信)
- 案件エージェントとの良好な関係(複数エージェント登録)
- 紹介による案件(前職の人脈が頼り)
営業が得意でない人は、早めに対策を立てないと50代で一気に詰みます。
誤解6:「単価交渉は常に成功する」わけではない
単価交渉の現実
フリーランスのHow to記事では「単価交渉は可能」と書かれていますが、実際には以下のような壁があります:
- 既に相場並みの単価で契約している場合、交渉の余地はほぼゼロ
- 景気が悪い時期(2026年現在、AI導入による企業内エンジニア減少で単価低下傾向)に交渉すると、案件を失う
- 下請け案件では、元受企業が値下げを要求されているため、フリーランス側の交渉は通らない
- 長期案件で交渉すると「契約更新なし」という報復を受けるリスク
実際のところ、単価交渉が成功するのは「他社からのオファーがある状況」だけです。そういう時は交渉ではなく「選択肢がある」という状態に過ぎません。
誤解7:「定年がないから50代・60代も稼ぎ続けられる」
年齢による仕事の減少
筆者が知る範囲では、50代を超えてフリーランスを続けている人は非常に少数です。その理由は以下の通りです:
- 体力の低下:徹夜対応・長時間稼働が物理的に無理になる
- 新技術キャッチアップ:40代でも大変だが、50代ではさらに難しくなる
- 顧客の年齢差:発注者が若い場合、40代後半のフリーランスは「時代遅れ」と見なされることがある
- 案件の質の低下:高度な案件は若いエンジニアに流れ、50代には保守運用案件しか来なくなる
- 単価の低下:年齢を理由に単価交渉で負ける
正直に言うと、50代でフリーランスを続けるには「高度なスペシャリスト」路線か「経営コンサル」へのシフトが必須です。単純なコーディング案件では、若い開発者にはかないません。
誤解8:「独立したら自由になれる」は半分本当、半分ウソ
フリーランスの自由と制約
フリーランスになれば「時間が自由」「仕事が選べる」と思っている人が多いですが、現実は異なります。
- 営業に時間を取られる:新規案件獲得に毎月10時間以上を費やす必要がある
- 事務作業が増える:請求書作成・税務申告・経費管理などが自分の仕事に
- 顧客対応が増える:会社員時代より顧客と直結しているため、連絡が頻繁
- 案件選択の制約:生活費を稼ぐために、興味のない案件も受けざるを得ない
- 健康管理の負担:病気・怪我で仕事できないと、そのまま収入ゼロになる
実際のところ、フリーランスの方が拘束性が強いという人も多いです。筆者も、会社員時代の方が「精神的には楽だった」と感じています。
40代がフリーランスで成功するための現実的な戦略
単価ではなく「案件の安定性」を優先する
40代以降は、月100万円の1ヶ月案件より、月60万円の12ヶ月継続案件の方が賢明です。理由は以下の通りです:
- 営業活動がほぼゼロ(既存顧客との関係維持だけ)
- 将来計画が立てやすい(ローン組みやすい)
- スキルアップの時間が確保できる
- 心身の負担が少ない
複数の案件・顧客を持つ
1つの案件に依存すると、終了時に一気に収入がゼロになります。最低でも2〜3つの案件を並行させることが理想です。
サブスクリプション的な固定収入を作る
技術ブログ・note・Udemy講座などで月5万円〜10万円の固定収入を作ると、心の余裕が生まれます。
次のステップ:あなたの単価と収入を診断する
本記事で述べたのは、筆者の19年間の経験から導き出した「一般的な傾向」です。ただし、個人差は非常に大きいです。
もし現在のあなたの単価・収入に疑問があるなら、以下の3つを確認してください:
- 相場確認:複数のフリーランスエージェント(レバテック・ギークスジョブ・アマテラスなど)に登録し、スキルに対する相場単価を把握する
- 手取り計算:年間売上から経費・税金・社会保険を引いた実際の手取りを正確に計算する
- 5年シミュレーション:現在の単価で5年後も稼ぎ続けられるか、技術の陳腐化やキャリア方針から判断する
正直に言うと、フリーランスは「楽して高収入」の道ではありません。しかし、正しい戦略と覚悟があれば、会社員より充実した仕事人生を送ることは十分可能です。
本記事の内容が、あなたの次の一歩の判断材料になれば幸いです。
フリーランスSEへの転向を検討しているなら
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