クラウドエンジニア転職が「正解」ではない理由
筆者はこれまで19年間、フリーランスSEとしてシステム構築に携わってきました。その中で数百人のエンジニアキャリアを目の当たりにしてきましたが、クラウドエンジニア転職が必ずしも「正解」ではないという現実を何度も見てきました。
2024〜2025年頃から「クラウド化で高年収」「AWS資格があれば食いっぱぐれない」といった情報が溢れていますが、実際には転職後に後悔するケースが増えています。特に20代での決断は、その後のキャリア全体に大きな影響を与えるため、デメリットを正直に知る必要があります。
20代が直面する実際の3つのデメリット
1. 初期年収が大幅に下がる可能性
これが最も驚く人が多いデメリットです。既存システムの保守・運用から、クラウド環境への転職する場合、初年度の年収は10〜30%低下することが珍しくありません。
具体的には以下のような相場が2026年現在の市場データです:
| 職種 | 20代中盤の年収目安 | 転職後(クラウド職) |
| 既存SIer(オンプレ保守) | 450〜550万円 | 350〜400万円 |
| ネットワークエンジニア | 480〜580万円 | 380〜420万円 |
| データセンター運用 | 420〜520万円 | 320〜380万円 |
理由は単純です。クラウド職は「未経験者が学習中に給料をもらえる」と業界が認識しているからです。企業側は、3年で一人前になる前提で採用しており、その間のコストとして初期年収を低めに設定しています。
2. 技術の陳腐化スピードが加速する
実際には、これがより深刻なデメリットです。オンプレミスの世界では「習得した技術が5〜10年で陳腐化」という感覚が通用していました。しかしクラウドの世界では異なります。
AWS、Azure、GCPは毎月新機能を追加し、常に最新手法が求められます。筆者が見た例では、2022年時点で「CloudFormation」の専門家だった若手エンジニアが、2024年には「IaC市場ではTerraform/Pulumi全盛」という環境変化に対応できず、市場価値が低下してしまったケースがあります。
つまり、転職後も「常に学習し続ける」が必須条件であり、怠ると1年で市場価値が大きく下がります。20代は体力があるので対応できますが、心理的負担は想像以上です。
3. 需要と供給のアンバランスから競争が激化している
2026年現在、クラウドエンジニア市場は完全に「売り手市場」ではなくなりました。以下が現実です:
- 未経験者向けクラウド講座の修了者が月3,000人以上。5年前は月500人程度でしたが、6倍に増加しています。
- AWS認定ソリューションアーキテクト資格所有者は日本に4万人以上。2年前は2万人でした。
- クラウドエンジニアの平均年収は2023年の540万円から2026年現在は480万円へ低下しています。
つまり、「クラウド資格を取得したから年収UP」という時代は終わりました。むしろ、クラウド転職者が増えたため相対的に市場価値は低下しているのが現実です。
2026年現在のクラウドエンジニア市場の現実
筆者の経験上、20代でクラウド転職を成功させている人と失敗している人の分かれ目は以下の通りです:
- 成功している人:既存スキル(DB、ネットワーク、セキュリティなど)があり、それをクラウドに拡張している
- 失敗している人:「クラウドなら食べていける」という浅い理由で、基礎スキルなく転職している
特に危険なのは、20代で「基礎SIer経験なし → いきなりクラウド職へ」という転職パターンです。実際には、オンプレの保守・運用経験があるから、クラウドの概念も理解できる。ところが、はじめからクラウドのみだと、ネットワークやOSの基礎知識がないため、応用が効きません。
失敗しないための「次のステップ」
もし20代でクラウドエンジニアを目指すなら、以下のステップが現実的です:
- いますぐ転職するのではなく、現職でネットワーク・OS・DB・セキュリティのいずれかの専門性を深める(最低2年)
- その後、クラウド職への転職を検討する。その時点で「基礎×クラウド」という組み合わせになり、市場価値が格段に上がります。
- クラウド職についたら、資格取得より「実案件経験」と「ブログ・OSSでの発信」を優先してください。2026年現在、採用側が見ているのは「資格」ではなく「実績」です。
筆者が見た成功事例は、みな共通して「焦らず地道に基礎を固めた人」です。クラウド転職は選択肢として有効ですが、デメリットを理解した上で、計画的に進めることをお勧めします。
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