クラウドエンジニア転職で新卒がやりがちな失敗と対策
筆者はフリーランスSEとして19年間、数百社のシステム構築案件に携わってきました。その中で、新卒でクラウドエンジニアへの転職を試みた若手エンジニアの失敗パターンを多く目撃してきました。正直に言うと、新卒からクラウドエンジニアへの転職は、適切な準備なしに進めるとほぼ失敗します。このコラムでは、実際の失敗事例と対策をお伝えします。
新卒クラウドエンジニア転職でよくある5つの失敗
1. オンプレミスの基礎知識がないまま転職してしまう
クラウド技術は、オンプレミスの基礎(サーバー、ネットワーク、ストレージ、セキュリティの基本)を理解していることが前提です。実際には、新卒でこうした基礎知識がないまま「AWSなら学べばいい」と考えて転職する人が多いです。筆者の経験では、こうした人の90%以上が入社6ヶ月以内に挫折しています。
理由は単純で、クラウドの各サービス(EC2、RDS、S3など)は、オンプレ的な考え方を前提に設計されているからです。基礎がないと、「なぜこの設定が必要なのか」が理解できず、トラブル時に対応できません。
2. 年収期待値が現実とかけ離れている
「クラウドエンジニアなら年収600万円以上確実」といった情報をネットで見て、期待を膨らませる新卒は多いです。2026年現在、実際の相場は以下の通りです:
| 経験年数 | 平均年収(東京) |
| 新卒〜1年 | 350万円〜420万円 |
| 1〜3年 | 420万円〜550万円 |
| 3〜5年 | 550万円〜700万円 |
新卒で即600万円のオファーが来たら、それは単価ではなく売上見積もりか、ポジション詐欺の可能性が高いです。筆者も過去、年収600万円で採用すると言われ、実際には客単価をそこから引かれて手取りが280万円だったという若手の相談を受けたことがあります。
3. クラウド専業企業と大企業SIerでのクラウド案件を混同している
実際には、全く異なる環境です。クラウド専業企業(スタートアップなど)は、学べる環境が整っていない場合が多いです。一方、大企業SIerでのクラウド案件は、ルールや文書作成が厳しく、実装よりも「報告・連絡・相談」に時間が取られます。
新卒が「クラウドを学びたい」という理由なら、ベンチャー企業が良さそうに見えますが、実際には先輩エンジニアが不在で、わからないまま本番環境を触らされるケースも多いです。筆者の経験では、新卒こそ、しっかりした大企業SIerでクラウド案件を経験すべきです。
4. AWS認定資格を取ったら実務スキルになると思っている
AWS Solution Architect Associateなどの資格は、確かに履歴書には見栄えがします。ただし、資格試験は「暗記と理解」で対応でき、実務スキルとは別物です。
実務では、セキュリティグループの設定でトラブルが起きたり、IAMロールの権限管理で何時間も費やしたり、リージョン間のデータ転送コストの最適化を求められます。こうした経験は、座学や模擬試験では身に付きません。新卒は、資格取得より「実案件での失敗経験」を積むべきです。
5. キャリアパスを考えずに「とりあえずクラウド」で転職している
「クラウドが流行っているから」という理由だけで転職する人も多いです。正直に言うと、クラウドのキャリアは、2つに分かれています:
- インフラ・アーキテクト方向:クラウドの最適化設計、コスト削減、セキュリティ。経験が積める。年収伸びしろあり。
- 単なるクラウド操作員方向:EC2の起動、RDSの管理、ログの確認。スキルが積めない。年収頭打ち(500万円前後)。
新卒の時点で「どちらの方向を目指すのか」を明確にしていないと、気付いたら時間だけが経ってしまいます。
新卒クラウドエンジニア転職の対策
事前準備:オンプレミスの基礎を3ヶ月かけて学ぶ
Linuxサーバー構築、TCP/IPネットワーク、DNSの仕組みなど、オンプレの基礎を深く理解してから転職してください。オンラインコースなら「Udemy」や「Progate」で月1000円程度で学べます。
企業選びで確認すべき3つのポイント
- 先輩エンジニアの在籍年数が3年以上いるか(いなければ、教育体制が整っていない可能性)
- クラウド初心者向けのオンボーディング研修があるか
- 年1回以上の資格取得支援費用があるか(会社がクラウド人材育成に本気か判定できる)
年収交渉で気を付けるべきポイント
新卒で年収500万円以上をオファーされた場合、以下を確認してください:
- その額が「売上」ではなく「給与」か
- ボーナスは何ヶ月分か(固定か変動か)
- 3年後の年収見込みが明記されているか
実務未経験の新卒なら、年収400万円前後で十分です。その代わり、「3年で年収600万円に到達するスキル習得」という契約書に書かれた約束があるかどうかが重要です。
入社後3ヶ月間で確認すべきこと
- VPC、セキュリティグループの概念が理解できているか
- 簡単なコスト最適化の提案ができるか
- トラブル時に先輩に頼らず、ログを読んで原因推定できるか
この3つができていなければ、その企業での教育体制は機能していません。転職を検討する信号です。
次のステップ
クラウドエンジニアへの転職は、正しい準備と企業選びで成功率が大きく変わります。焦らず、基礎から始めることが、実は最短の道です。
いま現在、クラウド転職を検討している新卒の方は、このコラムの「5つの失敗」に当てはまっていないか一度確認してみてください。そして、企業選びの際は、上記の「3つのポイント」をチェックリストとして使用することをお勧めします。
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